立ち読みコーナー
目次
288ページ
蜜愛王子と純真令嬢  ……5
あとがき       ……284
(66ページ)
 レスターはシンシアの反応に気分をよくしたように、喉の奥で低い笑みをこもらせる。それはシンシアが知る、優しくて紳士的な彼とは違う不埒さだった。
(……もっと、野性的で……た、食べられてしまうような……)
 レスターの舌の動きに、抵抗の力はついになくなってしまう。くたり、とレスターの胸の上に倒れ込むように覆い被さった。
 力が抜けてしまえば、レスターのしたいままだ。舌の絡みつきから解放されたかと思ったが、今度は口中をかき回すように味わわれる。
 歯列の裏側まで舌先で強く擦るように舐められ、頬の内側の柔らかい部分も軽くつつくように舐められた。
 食事のときですら、自分の舌を口中でこんなふうには動かさない。隅々まで舌で探られると、身体の奥深くまで暴かれるようだ。
「……ふ……っ」
 無意識のうちに、鼻先から甘い吐息が漏れてしまう。声は出ないが、この吐息だけでもひどくはしたなく思えた。……本当にこれは、自分のものなのだろうか。
 くちづけが深くなればなるほど、甘味が増してきて唾液が溢れてくる。混じり合ったそれを、レスターが喉を鳴らして味わった。
 すぐに、足りないというように、レスターはさらに深く唇を合わせてくる。飲み込まれるようにくちづけられて、シンシアの呼吸が苦しくなった。
 シンシアはレスターのシャツの胸元を、きゅっと強く握りしめた。
「……ん、ふ……ふう……っ」
 呼吸困難も加わったせいか、頭がくらくらしてくる。くちづけで人を殺すこともできるのかもしれないとさえ、思えてしまう。
(あ……私……もう……っ)
 息苦しさと、身体の奥に感じる疼くような熱に、どうしたらいいのかわからない。何とか感覚を散らそうとしても、無理だった。