立ち読みコーナー
目次
256ページ
プロローグ 王女の運命      5
第一章   純潔を奪われて    12
第二章   略奪者の正体     68
第三章   血の匂いの抱擁    109
第四章   春月の舘での日々   139
第五章   兄との深い夜     194
第六章   ひとり、踊る姫ぎみ  227
エビローグ 薔薇園の中の兄妹   237
あとがき             248
148ページ~
「誰が許さずとも、私はおまえを奪う気でいた」
 残酷な言葉を、ヴァランタンは吐いた。
「たとえおまえ自身が、だ。おまえ自身が拒もうと、私はおまえを手に入れる……」
「あ、あ……っ、……!」
 ヴァランタンの強い手が、リュシエンヌの顔を後ろに向かせた。再び唇を奪われる。今度のキスは、いきなり舌が入り込んでくる濃厚なものだった。
「んぅ……ん、ん、……っ……」
 拒もうとしても、ヴァランタンの厚い舌はリュシエンヌの歯などものともしなかった。唇をぐるりと舐めまわされ、歯を、その裏を舐められ、突き込むように襲いかかってくる。唇を奪われ呼吸を奪われ、リュシエンヌは激しく胸で息をする。揺れる乳房を、大きな手がドレス越しに摑んできた。
「ふ、っ……ん、ん、……、っ……」
 ぎゅっと力を込められると、ぴりぴりと体に走るものがある。それは全身に至り、まるでシャイエに抱かれたときの衝撃のようだ——彼はこれほど乱暴なことをしなかったし、なによりも彼は、リュシエンヌを抱くときには媚薬を使った——。
「あ、……、っ、……、っ……?」
 両の乳房を摑まれて、指がてんでにその上で動く。その刺激にもいちいち反応してしまう体。ぎゅっと強く力を込められると、ひくんと腰が動く。繰り返し刺激を受けていると、体の奥が濡れてくる。内腿をつぅっと伝う生暖かいものに気がついて、リュシエンヌは大きく目を見開いた。
「おにい、さ……、ま……?」
「なんだ、気づかなかったのか?」
 唇を離したヴァランタンは、嘲笑うようにそう言った。
「おまえは、疑いもせずに飲んでいたではないか。赤いワインの原料は、一般にはデリアの実……しかし似てはいるが猛毒とされるヘリアの実を使ったワインは、媚薬になる、と」
 ぞくっ、とリュシエンヌの体に走ったのは、悪寒だったのか快感だったのか。ヴァランタンはリュシエンヌの乳房を揉みしだきながら、リュシエンヌの唇を奪う。吸いあげられて、呼吸ができなかった。
「あの舘にも、ヘリアの実を使ったワインがあったな……同じ女を愛する男は、考えることも同じなのか?」
「でも、……、で、も……」
 シャイエに媚薬を盛られたときは、かっと体が熱くなって、反応は早く訪れた。しかしこの春月の舘に着くまでの一週間、リュシエンヌはずっと温めた赤いワインを飲んでいたのだ。それなのに、一度も媚薬の効果を感じたことはなかった。
「三日だ、リュシエンヌ」
 ちゅく、と妹の唇を奪いながらヴァランタンはささやいた。
「あのワインは、味が薄いと思わなかったか? 濃度で、効果の出る具合を調整することができる。おまえの体に効くのは三日、この春月の舘に着くのにも三日かかると見ていたのだが……」
 重なった唇から、舌が入ってくる。先ほどのように強い力で中をまさぐられて、リュシエンヌの体の熱は少しずつあがってくる。反射的に兄の舌を吸いあげてしまい、流れ込んできた唾液をごくりと飲み下す。
「雨が降って、進めなかったからな……しかしおまえの体もヘリアに慣れていて、効くのに時間がかかった……。結局、おまえがヘリアの実でできたワインに反応したのと、この春月の舘に着くのは同じときだった……」
 相手の唾液を飲み込むなど、淫らなことを——リュシエンヌは身悶えたけれど、それさえもが熱になって体を駆け巡る。確かにシャイエに飲まされたワインの効果を思い起こさせる感覚が下半身で弾けて、リュシエンヌは声をあげた。
「諦めろ。このワインを飲んだときから、おまえの運命は決まっていたのだ……せめて、この体に触れるのが私だけでありたかったというのが、悔やまれるところ……」