立ち読みコーナー
目次
320ページ
溺愛殿下の密かな愉しみ   5
あとがき          318
140ページ~
 女に所有印をつけたいと思ったことなど一度もなかったのに、この白い肌は不思議と、触れた証を残さずにはいられない気持ちにさせる。
 点々と、赤い花弁を散らしていく。触れれば触れるだけ、甘い香りが濃密になっていく気がした。
「ん……、ん……っ」
 口づけるたび薄い身体がぴくりと跳ねるのを見て、アストロードはセラフィーナの平たい腹に手を当てた。柔肌の感触は、驚くほどにすべすべとして滑らかだった。そして驚くほどに、薄い。抱え上げたときの印象そのままの、細い身体だった。
 余すところなく触れたいと暴走しそうになる己を律するために、わざと硬い表情を作る。
「——君は、少し痩せすぎだ」
 強く抱きしめれば潰れてしまいそうだ。腕だって少しでも強く力を込めれば、ぽきりと折れてしまいそうなほどに細い。
「ご、ごめ、なさ……」
 批難されたと感じたのか、彼女は微かに青ざめた。
 怖がらせるつもりなどなかっただけに、焦ってしまった。慌てて取り繕う。
「責めているわけではない。ただ、健康のためにもう少し肉を付けたほうが良いと思っただけだ」
「あっ……」
 焦れた手つきで組み紐を解き、胸元の下着を適当に投げ捨てた。
 ふるりと零れ出た乳房がアストロードの目に晒されたのはほんの一瞬で、すぐにセラフィーナの両手が覆い隠したせいで見えなくなった。
「セラフィーナ」
「……」
「見せなさい」
 短く命じたが、返ってきたのはふるふると首を横に振る仕草——拒否だった。
 往生際の悪いことだ。恥じらいも興奮を煽る要素にはなるが、行き過ぎると邪魔になる。
 両腕を摑んで胸から引きはがし、敷布の上に縫いとめた。
 形の良い双丘が、なだらかな曲線を描いている。先端は何者にも触れられたことのない薔薇の蕾のように、淡く慎ましい色をしていた。
 若く、瑞々しい身体だ。そういえば彼女はまだ、十七歳だったか。
 金目当てで近づいたことに落胆していても、男の欲望は正直だ。十歳も年下の少女に欲情し、一刻も早く自分の熱を刻みつけたいと思っているのだから。
 一度見られてしまって、諦めもついたのだろうか。手を解放しても、もうセラフィーナは自分の身体を隠そうとはしなかった。その代わりにぎゅっと目を瞑って、視界を遮る。そんなことをしたって、アストロードの視線から逃れられるわけではないのに。
 だがそんな無駄な行動を見ていても、不思議と苛立ちはなかった。むしろ可愛らしいとさえ思う。これで演技でないとすれば、セラフィーナは無意識に男を煽る才能に恵まれている。
「あ……」
 アストロードは欲望の赴くままにセラフィーナの胸に手を伸ばし、生地をこねるように熱心に揉みしだいた。ほどよい弾力がありながらも、指が沈み込むほど柔らかいそれは、掌に沿って自在に形を変える。
 まるでアストロードのためにあつらえたかのように、ぴったりと掌になじんだ。
 そうしているうちに、手の中で胸の先が尖り始める。
 アストロードの掌は固い。幼少の頃から剣の稽古は欠かさなかったし、士官学校に籍を置いてからは昼夜問わずふるい続けてきた。肉刺が潰れてその部分が硬化した手は剣ダコだらけだ。その固い皮膚に刺激されるたび、セラフィーナは身を捩って声が出るのをこらえている。
「ふ……ぅっ」
 耐えている姿にもそそられるが、せっかくだからもっと感じている声が聞きたい。
 食い込んだ指の隙間から覗いている赤い尖りに、アストロードは迷わず舌を寄せた。尖らせた舌先で突くと、セラフィーナの背がびくりと仰け反る。
「あっ! い、いや……」
「誰にも聞こえないから、声を遠慮しなくて良い」