立ち読みコーナー
目次
280ページ
序章            5
第一章  聖花パドメ    7
第二章  月の帝王     31 
第三章  初夜の褥     52
第四章  暁の光      75
第五章  満月の夜     98
第六章  月と太陽     120
第七章  黄金の妖     140
第八章  無憂樹の花    155
第九章  神々の恋歌    189
第十章  芳しき毒の花   213
第十一章 終演の舞     238
終章            270
あとがき          276
61ページ~
「これを解きなさい!」
「できぬ」
 チャンドラはパドメの言葉を聞き流すと、寝台にある小瓶の蓋を開けて匂いを嗅いだ。
「ほら、これを飲め」
 有無を言わせず、頬を掴まれ口をこじ開けられたパドメは、喉に直接流し込まれる甘い液体を飲み込むしかなかった。むせて咳き込む彼女を見て、チャンドラは脇にあった水差しを取ると水を口に含み、口移しでパドメに飲ませた。
 まだ舌先にあの液体の感覚が残っている。痺れるほどの甘さが口いっぱいに広がっていく。
 途端に、ぐらぐらと頭を振られた気がして、大きく瞬きした。まるで強い酒を飲まされたようにふわりと体が浮きそうになる。
「今飲ませたのは媚薬だ。すぐに効いてくるだろう。体が火照り、肌が敏感になる」
「どうして……媚薬など……」
 チャンドラはため息をつくと、寝台に腰掛けてパドメを見下ろした。
 感情のこもっていない冷ややかな瞳に見つめられ、背筋に冷たいものが走った。
「毒ではない。初夜の痛みを紛らわせるものだ。本当は使いたくなかったが仕方ない。夫に刃を向けたのだからな。それ相応の罰を受けよ」
 指先で、頬を軽く撫でられた。それだけでぞくぞくとするものが体を這い上がっていく。
 パドメは寝台で体を折って丸くし、身をこわばらせた。
「罰などと……」
 体の奥から奇妙な熱がこみ上げてくる。熱は下腹に広がり、体を覆い尽くしていく。
 チャンドラは、パドメの様子を観察しながら体に触れた。罰とはいいながらも、肌が露出した腕や脚を、触れるか触れないかの距離で優しく撫でていく。徐々にその刺激は、体が痺れるほどの震えに変わっていった。
「くっ……あぁっ……」
 とめどなく続く拷問のような責めに、パドメは気が狂いそうになっていた。
 チャンドラは、耳元に息を吹きかけた。
「そろそろ効いてきたか」
 パドメは必死に声を堪えた。
「こんなもの……効きませぬ……!」
 楽しそうな笑い声を上げたチャンドラは、はだけていた腰布を、そろそろと上へとめくり上げていった。
「馬に乗るからだな。無駄な肉もない。よく鍛えられていて美しい脚だ。私にも乗ってみるか」
「や……!やめ……!」
「そうもったいぶるな。本当は処女ではないのだろう。お前は戦場で、巫女として神の祝福と快楽を兵たちに与えているという噂もあった。愛の神カーマの技で男たちを快楽で縛り、鼓舞している。だからこそマガダ国の兵は強いのだ、とな。その体に一体幾人の男を受け入れた?」
 パドメは怒りで目を見開いた。
 幼い頃から戦場で育ったパドメにとって、兵たちは親と同じだった。皆、子供の頃からパドメを娘のように扱い、武器の扱い方や戦い方を教えてくれた。
 彼らは戦場で前線に立つ自分を、自らの体を張って守ってくれた。中にはパドメを守るために命を落とした者もいるのだ。なのになんということを。
「この下衆が……っ!」
 身をよじったパドメを寝台に縫いつけるように押さえたチャンドラは、耳元に囁いた。
「下衆で結構。どんなに高貴な姫であろうが、こうなればただの女。これからお前は、奴隷の血を引く下賎な男に犯されるのだ」
 パドメはチャンドラを思い切り睨んだ。
「……殺せ……」
 歯を食いしばったまま、唸るように声を絞り出した。
「……こんな辱めを受けるくらいなら……この場で斬り殺されたほうがいい。さあ!今すぐ殺すがいい!」
 しかしチャンドラは、涼しげな顔でパドメの様子を眺めている。彼の手は、腰布の下に入り込み、脚をゆっくりとさすった。