立ち読みコーナー
目次
272ページ
砂の国の花嫁            ……7
それからどうなったかというと…。  ……253
あとがき              ……268
(53ページ〜)
「興ざめだ」
 突き放すように言って、クロストムは身体を起こして娘から離れた。そうでも言わないと目の前の娘から離れがたく、すでに滾った己の分身を抑えることができなかったのだ。
 欲望のまま突き進んでしまい、酷いことをした、と後味の悪さが残る。
「待って!」
 娘がクロストムの手を掴んだ。
「泣いて嫌がる女を抱くつもりはない」
 自分への言い訳だった。
「これは、これは条件反射。そう、条件反射なの。気にしないで」
 慌てて涙を拭き、必死に言い訳する娘をクロストムは見下ろした。
「お前はどうしてそこまでするのだ」
 そこまでして土を欲しがる理由が、クロストムにはわからない。
「土が必要なのは、何かを育てるためなのか?」
 その問いに、娘はほんの少し反応したが、それでも話そうとはしない。
 クロストムは溜息をついて、帰れ、と言った。
「いや、嫌です!」
 娘は縋りついてきた。
「興ざめだと言っただろう。もういい、とっとと帰れ」
「でもっ!」
 途中でやめると、土がもらえないと思っているのだ。
「持って帰るがいい」
 クロストムの言葉に、娘は目を見張った。
「これでわかっただろう。自分のしようとしていたことがどんなことなのか」
 娘は慌てて身を小さくし、両腕で胸を隠した。隠しきれていない白い果実には、クロストムのつけた赤い印がいくつも見える。
 自分の犯した罪に居たたまれず、クロストムは娘から視線を外した。
「土はすでに塀の外だ。お前があれを拾って持って帰っても、咎められることはない」
「本当に?」
「私を疑うのか?」
 娘は涙を飛び散らしながら、頭を振った。
 服を着るように言い、クロストムは立ち上がって背を向けた。しばらくして、パタパタと音がしたと思ったら、ありがとう、とマントが後ろからそっと差し出される。
 汚れを払ったマントをクロストムが受け取ると、娘は鼻を啜りながら歪んでいたカチーフを深く被り直した。
 衣服を整えた娘には、さっきまでの色めく姿はどこにもなかった。
 娘は深々と頭を下げると塀へと向かう。
「土が欲しければまた来るがいい。だが、次は覚悟して来い」