立ち読みコーナー
目次
296ページ
灰狼侯爵と伯爵令嬢       5
あとがき            289


53ページ~
「これで気が済んだのではないのか」
 再度、侯爵はハンドラに部屋から出ていくように言った。
 ハンドラは何か言っているようだったが、サリーディアには聞こえなかった。それどころではなかったのだ。
 ダミアンが用意した媚薬は非常に強いものだったようで、秘部の疼きは酷くなる一方だった。淫らな欲望が身体中に渦巻いて、肉壁を数度擦られただけでは癒えなかった。
 刺激を受けた秘部の肉壁は、納まっている分身に絡みついていた。出ていかないように引きとめ、さらなる刺激を求めている。
 何度も何度も最奥を突き、肉壁を削ってほしい…、と。
 チーフを嚙みしめ、サリーディアは欲情を抑え込もうと必死になった。ハンドラたちはまだ部屋の中にいる。性交を終えたのに喘ぎ声を出してしまったら…。
 淫乱な娘だと言われる。
「現伯爵夫人は一度見ただけでは満足できないということか。他人の閨を覗くのが趣味とは知らなかった。だが、私の交接に助言は無用だ。かまわんぞ。夜会に集まっている者たちに、ホズウェル侯爵は早漏だと、面白おかしく伝えるがいい」
 侯爵の声は笑いを含んでいた。
 ハンドラは言い訳していたようだが、扉が閉まる音がしたので渋々部屋から出ていったのだろう。
「もう大丈夫だ」
 侯爵はサリーディアが食んでいたチーフを外した。
「取らないで! いやっ、あっ…ん…」
 侯爵が身動ぎしたので、サリーディアは喘いだ。
 ハンドラたちがいなくなったことで、なんとか繋ぎとめていた緊張の糸が切れてしまったのだ。衝動をやり過ごそうとしても、身体がぶるぶる震える。苦しくて涙が滲んできた。
「痛かっただろう」
「違うのです。私…く……ぁあぁ……っ」
 侯爵は目を細め、一瞬息を詰めた。
 サリーディアの意思を無視して肉筒が勝手に蠢き、侯爵の分身を締めつけたのだ。納まっている侯爵の分身がさらに逞しくなり、サリーディアは喘いだ。
 侯爵が何か言おうと口を開きかけた時、扉がノックされ、ほんの少しだけ扉が開いた。
 ハンドラかダミアンが来たと思ったサリーディアは、侯爵のマントの端を握りしめた。身を固くして息を潜める。下腹に力を入れると、侯爵は眉根を寄せて息を詰めた。
「ヴィンセント様」
 若い男の声がした。
「……っ、エドワード、か」
「はい」
 侯爵はふうっと静かに息を吐いて、ひと呼吸置いた。
「扉の前に立ち、私が出ていくまで誰も入れるな」