立ち読みコーナー
目次
264ページ
乙女の騎士道 ~ロマンティックな玉の輿~  5
エピローグ     254
あとがき      260
126ページ~
 レンは苦笑した。ウィトラ銃士隊は国王の目に適った者でないと入隊できないと聞いていたが、レンの様子からきっと彼が国王に兄を推薦してくれたのかもしれない。
「いえ、名誉あるウィトラ銃士隊に入隊できたなんて、お兄様は我が家の誇りです。父も本当に喜んでおりましたから」
 決まったときはリリスもぐずったが、今ではそれも懐かしい思い出だ。兄は王都で国のために働ける人なのだ。
「リリックのお父上、フォーリア子爵は領民からの評判も上々だと聞く。優しいお父上なのだな」
「ええ、大好きなお父様よ」
「そうか……なら、リリックまで王都に引き留めようとすると、お父上も反対なさるかな」
「え?」
 リリスは隣に立っていたレンを改めて見上げる。彼の瑠璃色の瞳に、仮面で表情がよくわからないリリスの顔が映っていた。
 な、何? 胸がどきどきしてくるわ……。
 リリスは逸る心臓をドレスの上からきゅっと掴んだ。
 レンの双眸が細められる。その瞳に囚われて、リリスの躯が動かなくなった。
 あ……、言わなきゃ。私、本当は女の子だって、レンに言わなきゃ……。
 そう思いながらも、声が喉から出てこない。
 彼の顔がそっと近づいてきた。
 あ——。
 とくん、とリリスの心臓が甘い音で鳴った。
 レンの唇がリリスの唇を塞ごうと近づく。リリスは逃げることができなかった。信じられないが、彼とキスがしたいと心のどこかで願っている自分がいる。
 レン——。
 レンの唇がまるで壊れ物に触れるようにリリスの唇に触れた。甘い痺れがリリスの背筋を駆け上がった。
 っ——。
 くすぐったいような、それでいて心臓をきゅっと締めつけられるような感覚に、心がどきどきする。
 ゆっくりと唇を離せば、彼の凜とした瑠璃色の瞳と視線がかち合う。
「私……」
「リリック——」
 レンが何か言いたげに口を開いたときだった。兄、ルーカスの声がレンとリリスの仲を引き裂くように響いた。