- 目次
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プロローグ 5
第一章 25
第二章 57
第三章 115
第四章 154
第五章 193
第六章 236
第七章 281
エピローグ 298
あとがき 308
96ページ~
「い、一途に思ってたなんて……大げさよ……」
「別に大げさでもなんでもない……俺は、本気であんたが好きなんだ、ヴィヴィアン。再会できて本当に嬉しい。取り締まりで会えたあの日から、ずっと夢見てるみたいな気分だ」
『男なんか信じてもいいことがない』。頑なにそう信じていた気持ちが、だんだん溶けて消えていく。
─リオネルは嘘をついてないと思う。私を騙しても、なんの得もしないもの……。
ヴィヴィアンは、身体の力を抜いた。
濃紺の瞳を見つめ返し、小さな声でリオネルに答える。
「わかった。今日のところは信じてあげる」
「……はは、毎晩言わされるのか、勘弁してくれ……まあいいや。言ってやるよ。俺はあんたに惚れてる。だから今すぐ抱きたい」
─どうしよう……。
一瞬戸惑ったが、揺れる心の天秤は、すぐにリオネルのほうに傾いてしまった。
きっと、リオネルの目に誘惑されてしまったからだ。
綺麗な目には、毒があるのかもしれない。
リオネルの甘い毒のせいで、正しい判断ができなくなってしまうのだ。
ヴィヴィアンは、手のひらの下のシーツをぎゅっと握りしめた。
─こんなこと……許しちゃダメなのに……女は、男に身体を許しちゃダメなのに……!
一生懸命に積み上げようとする防壁が、砂のようにさらさらと崩れていく。
なぜ、彼にはすべてを許そうとしているのだろう。これまで、あれほど恋に溺れ、多くを失う女たちを軽蔑してきたのに。
─でも……私……リオネルが嫌いじゃないのかもしれない……から……。
自分の心の変化に戸惑いながら、ヴィヴィアンは身体の力を抜いた。
逞しい身体に組み伏せられ、唇を奪われながら、ヴィヴィアンは広い背中に腕を回す。
昔は痩せていたけれど、今の彼の身体は無駄一つなく鍛え上げられ、引き締まっている。
自分自身をとがめる声は、いつしか聞こえなくなっていた。
こんなふうに情熱的に求められたら、どんな人間だって逆らえない。だから平凡なヴィヴィアンが逆らえなくても、仕方がないのだ。リオネルの唇がヴィヴィアンの唇を押し分けて、中へと忍び込んできた。
─舌、本当に入れるんだ……。
戸惑いながらも、ヴィヴィアンは唇をむさぼるリオネルの背中を抱きしめた。
口腔をまさぐる舌の感触に、次第に頭が痺れてくる。
もっと無垢な身体を暴いてほしいと、今まで感じたことのない欲望が湧き上がってくる。
男に触られるのは好きではなかったのに、リオネルならいいと思えた。
ヴィヴィアンは震え始めた身体で、必死に荒々しいキスを受け止めた。
のしかかるリオネルの身体も、焼けるように熱い。
唇を離し、頬に、首筋に何度もキスをして、リオネルが苦しげに大きく息をついた。
「あんたみたいな跳ねっ返りを愛せる男なんか俺くらいだ。諦めて俺のものになってくれ」