立ち読みコーナー
目次
320ページ
序章 不幸の始まり         5
第一章 裏オークション       17
第二章 彼女を買った隻眼の主    29
第三章 葛藤~バラの誘惑      65
第四章 港町を騒がす事件      142
第五章 取り戻した大切なもの    216
第六章 決着~婚礼         248
終章 死神元帥の執着        292
あとがき              312
「あの……。私にお仕事をさせてください」
「え?」
 だがステラがいきなり「仕事をさせてほしい」とわけのわからないことを言うので、彼は思わずこちらを見た。
 ガウンを羽織ったステラは赤面したまましずしずと近づく。そして彼の目の前でゆっくりとガウンの腰紐を解き、パサリと小さな布音をさせて脱ぎ捨てた。
「……ステ……ラ」
 ランプの明かりに照らされて、ステラの真っ白な肌が浮かび上がる。
 薄い布に包まれた肉体は、赤い色も相まっていつもより彼女を大人びて見せた。
 ステラは白い頬を赤らめ、唇には少し赤みの強い紅を塗っている。首から肩の華奢なラインは丸出しで、肩から伸びた赤い紐は大きく盛り上がった双丘の上で二輪のバラに変わっていた。
 胸の谷間には小さなリボンがあり、そこから何枚ものバラの花びらを重ね合わせたような身ごろに繋がっている。けれどその中央は大胆に開いていて、柔らかそうなお腹が丸見えだ。
 ちょこんとしたへそがある付近にはレースでできた靴下留めがあり、ぷくんと膨らんだ恥丘にはやはりバラが咲いている。バラを支える紐は柔らかな腹部に微かに食い込み、その陰影が肌の柔らかさを如実に語っていた。
 バラの下は白金の和毛があるのだが、毛量が少ないこととバラの陰になっていることで見えていない……はずだ。
 太腿は靴下留めから下がったベルトで、バラ柄レースの長靴下に包まれている。
 震える脚でステラはアイザックの前に立ち、声すらもわななかせて彼に告げた。
「……どうぞ、私を女として役立ててください」
 蚊の鳴くような声で告げた時、弾かれたようにアイザックが立ち上がり、自身のガウンを脱いでステラに羽織らせた。
「なぜこんなことをする」
 詰問され、羞恥の極限で誘ったというのに拒絶されたと思ったステラの目に、涙が浮かび上がる。
「……ア、アイザック様に満足していただきたいのです」
「誰がそんな入れ知恵をした。ルビーか?」
 ステラに魅了されるというより、アイザックは怒っているようだ。
 ルビーの名前が出て、ステラは顔を上げて何度も首を横に振った。
「違います!わ、私からアイザック様とお近づきになりたいと、ルビーに相談したのです。彼女は私の望みを叶えてくれようとしただけで、何も落ち度はありません」
「だからと言って……」
 ステラの肩に手を置いたアイザックが、深い溜め息をつく。
(……どうしよう。失望させてしまった?呆れられてしまった? ……でも)
 ここまで来ては戻れないと、ステラは思いきってアイザックに抱きついた。
「っ……ステラ」
「わ、私……っ。そんなに魅力がありませんか?」
「そんなことはない。なぜそう思う」
「カリガからエイシャルに来るまで、あなたは私と同衾しても決して女として求めませんでした。私はそんなに、アイザック様の好みから逸脱していますか?」
 こうなったらはしたないなどと言っていられない。ルビーにお膳立てまでしてもらったのに、アイザックに大人の対応で部屋まで送り返されたとなれば、逆に恥だ。
 手紙を見てしまって嫉妬したことは、誰にも絶対に言わない。自分はただ、アイザックの役に立ちたいのだという強い気持ちを持った。
「君は自分が買われたと思っているのに、道中で手を出していたら鬼畜の所業だろう。私だって我慢をしていた」
「そ、その〝我慢〟は、いつまで続くのですか?」
 泣きそうになりながらステラは必死に食い下がり、潤んだ目でアイザックを見上げる。
 金色の瞳に見つめられ、アイザックは乱暴に溜め息をつく。
「きゃ……っ!?」
 そして少し屈んだかと思うとステラを抱き上げ、大股に寝台まで向かうとステラをその上に寝かせた。
「ん……っ」
 マットレスの上で少し弾んだステラを、アイザックは組み敷いてくる。
「……私が獣のように君を貪ってもいいというのか」