立ち読みコーナー
目次
288ページ
序章 身代わり寵姫の秘めやかなおつとめ     5
第一章 邂逅 ─ 仮面の紳士と二匹の子猫      14
第二章 再会 ─ 皇帝陛下に見初められて      45
第三章 寵愛 ─ 日々、おつとめに啼き乱れて    99
第四章 思慕 ─ 初めての恋に心乱れて       157
第五章 運命 ─ 交錯する想いの果てに       207
第六章 真実 ─ 確かな愛は揺るぎなく       237
終章 おつとめはどこまでも深い愛に満ちて    279
あとがき                    285
序章 身代わり寵姫の秘めやかなおつとめ

(まあ、もう時間が来てしまったわ!)
 大聖堂から夕刻の鐘の音が聞こえる。ヴィオラは鏡に映った薔薇色のドレスの大きく開いた胸元を、手でほんの少し引き上げた。
 ロランディア帝国の帝都、エルトリオにある、グランロランディア宮殿。
 長く暮らしていた人里離れた山奥の修道院を出て、ヴィオラがこの絢爛豪華な白亜の宮殿にやってきたのは、まだほんの一か月ほど前のこと。
 ほとんど音信不通だった実家に七年ぶりに呼び戻されたヴィオラは、そのまま一人、帝都へと送られた。
 戦乱の世を治め、大小いくつもの王国や公国、貴族領からなる一大帝国を築いた軍人出身の初代皇帝が、貴族はその子女を一人、行儀見習いのために一年間、帝都に住まわせなければならないとふれを出したためだ。
 でもまさか、謁見したその晩に宮殿に召し出されるなんて思わなかった。
 しかもそのまま皇帝の寵姫になって宮殿に私室を与えられ、毎日のように「おつとめ」をすることになるなんて——。
「髪留めはこちらでいかがでしょう、『ロザリア』様」
「……」
「……あの、ロザリア様?」
「っ! は、はい! それでお願いします!」
 私室に置かれた鏡台の大きな鏡越しに、女官が怪訝な顔をしているのが見えたので、慌てて答える。その名で呼ばれるのには慣れたつもりだが、気を抜くとときどき自分のことだと気づかず、相手を戸惑わせてしまう。
 でも自分は今、双子の姉「ロザリア」の身代わりとしてここにいるのだ。それだけは忘れないようにしないと……。
「大変! 陛下がそこまでいらしてますわ!」
「まあ、どうしましょう! まだお支度が整っていませんのに」
(……陛下が、こちらにっ?)
 慌てふためく女官たち以上に、ヴィオラも焦ってしまう。
 いつもはヴィオラが皇帝の寝室に伺うのに、もしや待ちきれなかったのだろうか。
「やあ、私の可愛い人! 今夜もとても美しいね」
 ヴィオラの私室の入り口から、穏やかで甘い声が届く。
 ロランディア帝国初代皇帝、マティアス・マクシミリアン。
 軍人らしい堂々たる体躯には畏怖を覚えるものの、ハニー色の豊かな金髪と、輝く青い瞳からは、優雅で鷹揚な気質が伝わってくる。
 女官たちが流れるように部屋を出ていくと、マティアスが静かにドアを閉め、すっとこちらへやってきた。
「あなたと半日も離れていたなんて信じられない。逢いたかった」
「陛下っ……、ん、ん……」
 体を抱きすくめられて口唇を奪われ、びくりと身が震える。
 離れていたのは半日だけれど、昨日の晩は幾度も身を重ねたし、そのまま今朝も起き抜けから彼の寝室で濃密な時間を過ごした。
 結び合うたびヴィオラの体は甘くしびれたみたいになって、しばし動けなくなるほどなのに、マティアスの行為への熱は少しも衰えないようだ。
 ただでさえ、皇帝として政務や軍務で多忙を極めているというのに。
(でも、だからこそわたしを必要とされているのかもしれないわ)
 国家元首である皇帝の御身を、繊細な心遣いとその身とで癒し、お慰めする。
 それが寵姫の大切な役割だと、ヴィオラは帝都での後見人になってくれているスカラッティ男爵夫人に教えられている。
 ここへ来たのは姉ロザリアの身代わりとしてだが、思いがけないことだったとはいえ、並みいる淑女たちの中からたった一人、皇帝マティアスの寵姫に選ばれたのだから、しっかりとつとめを果たさなくてはならない。身代わりであることがばれてしまったら、姉や父がどんなお叱りを受けるかもわからないのだし……。
「私の部屋へ連れていこうと迎えに来たが、もう、ここで欲しいな」
 キスで溶けかけた頭にマティアスの声が届く。こことは、この部屋ということ?
「陛下……、ですが、隣室には女官たちが」
「あなたのベッドで愛し合いたいのだ。嫌かな、ロザリア?」
 甘えるみたいな目をして、マティアスが問いかけてくる。
 一分の隙もないほど立派な男性にそんな目で見つめられると、なんだかそれだけでドキドキしてしまう。けれど、女官たちがすぐそこにいるのにと思うとやはり恥ずかしい。
 でも姉の名で呼びかけられたことで、ほんの少し冷静になる。
 これはおつとめなのだから、マティアスが望むことならなるべく素直に受け入れたい。ヴィオラはそう思い、頬を熱くしながらもうなずいた。
「陛下の、お心のままに」
 おずおずと告げると、マティアスがにこりと微笑んでヴィオラの手を取り、ベッドへと連れていく。
 マティアスの寝室のベッドと違い、女一人が眠るための小さなベッドだ。横たわるべきなのか座るべきなのか判断がつかずにいると、マティアスがベッドに腰かけ、ヴィオラを膝の上に抱き上げた。そうしてドレスの胸元を留めるリボンに指をかけて、ささやくように告げる。
「私の愛しい人。あなたは本当に可愛い」
「陛……、っ、ぁ」
 しゅるっとリボンをほどかれ、ほろりと胸が露わになり、思わずさっと目をそらす。マティアスがふふ、と小さく笑って、胸の先にちゅっと吸いついてくる。
「ぁ……、あ」
 舌で乳首を転がされて、小さく吐息がこぼれる。
 もう何度もされているせいか、ヴィオラのそこはすぐにきゅっと硬くなり、お腹の下のほうがはしたなく疼き始める。
 腿の間の蜜壺もじんわりと潤み、熱っぽくなっていくのがわかる。
 まるでこれからすることに、体が期待してしまっているみたいだ。
「あ……っ」
 胸にキスを落とされながら、薔薇色のドレスの裾をそっと持ち上げられ、脚を手で優しく撫でられて、息が乱れる。
 マティアスの手はとても大きくて温かく、独特の力強さを持っている。素肌に触れられただけでヴィオラの胸はさざめき、身も心も彼に委ねたい気持ちになる。
 ちゅ、と淫靡な音を立てて胸から口唇を離して、マティアスが言う。
「あなたはいつでも甘い味がする。とれたての果実のようだ」
「陛下っ」
「今にも弾けそうなほど熟れた果肉……。そしてその芯には、たっぷりと蜜を滴らせている」
「ぁ、あっ——」
 閉じた腿の間にマティアスの手が滑り込み、薄い茂みのあたりをやわやわとなぞる。
 そうして柔らかい襞の合わせ目に埋まったパール粒を探り当て、肉厚な指先で転がすみたいにもてあそぶ。
「ん、ぅ、はぁ、あ」
 そこはとても感じやすいところで、いじられるとそれだけで喜悦の高みへと弾き飛ばされそうになる。どうにかそれをこらえても、蜜壺の奥がふるふると震え、秘められた場所がとろとろと濡れて、甘く溶け始める。
 そうなってしまうのが恥ずかしくて、頬を熱くしながらマティアスの肩にしがみつくと、指先が今度は、秘裂の花びらを左右に分け入るようにしながら下りてきた。
「は、うっ、ふう、う」
 ヴィオラのそこの熟れ具合を確かめるみたいに、マティアスが指を上下に動かす。
 優しいその動きが淡くしびれるような悦びを生み、ヴィオラの背筋を伝い上がる。
 彼の長い指には愛蜜が絡みつき、その動きは次第にぬらり、ぬらりと淫猥な湿り気を帯びていく。
「可愛いよ。あなたのここ、私を歓迎しているみたいだ」
「へ、いか」
「中も、ほら。嬉し涙を流しているよ?」
「ああっ」
 とぷり、と音が立ちそうなほど濡れそぼったそこに、マティアスの指が沈み込む。
 硬い指の感触に驚いたみたいに、肉筒がきゅうきゅうと収縮するけれど、襞は彼の指に絡み、包み込んで吸いつく。
 その感覚を楽しむみたいに、マティアスがゆっくりと指を出し入れし始める。
「ぁ……、あっ……」
 くぷ、くぷ、とかすかな音を立てて中をなぞられ、声がこぼれる。
 自分では見たことも触れたこともない場所なのに、マティアスはもうすっかり知り尽くしていて、どこをどうすればヴィオラが反応するのか、本人以上によくわかっているようだ。
 中で指を曲げて前壁をくすぐるように撫でられ、小刻みに動かされたら、お腹の奥に悦びのさざ波が立ち始めた。
「ふ、ぅう、陛下っ」
「気持ちいい?」
「う、うう、おっしゃら、ないでっ」
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ? 感じているあなたは、とても愛らしいのだから」
「あ、ああ、そ、なっ!」
 蜜筒をまさぐる指を二本に増やされ、くちゅくちゅとかき回されて、ビクビクと体が震える。足が跳ねて片方の靴が飛んでしまったけれど、マティアスは気に留めることなくさらに指を深くまで沈めて、二本の指の先で前壁の敏感な場所をすくい上げるみたいに執拗になぞってくる。
 そこをそうされると、もう身の昂りを止められなくなってしまう。
「はぅ、だ、め! もうっ、わた、しっ……」
「気をやりそうなのかい?」
「ん、んっ!」
「いいよ。私の指で達ってごらん」
「ああ! ふっ、ぁああっ」
 指を出し入れするスピードを速められ、甘く優しく追い立てられる。
 悦びのさざ波が一気に大きくせり上がって、お腹の底でどうっと弾けて——。
「っ、ぁ——」
 びくん、びくんと体を震わせて、ヴィオラが頂を極める。
 視界が真っ白になって、体を愉悦が駆け抜ける。マティアスがヴィオラの耳朶にちゅっと口づけて言う。
「あなたの中が、うねっている。私の指を放すまいと締めつけて」
「そ、んな、お、しゃら、なっ……」
「気をやる瞬間の姿も、どこまでも可愛い。もっと甘い顔を見せて、ロザリア」
 姉の名で呼ばれても、こうなってはもう冷静さを取り戻すことはできない。ただただ悦びの奔流に押し流され、自分を保つことなど少しもできない。
 こんなふうに我を忘れてしまうのも、とても恥ずかしくてたまらないのだけれど。
(これは、おつとめなの。わたしの、大事なおつとめだからっ……!)